みんなの「あったらいいな」を実現する電子レシートの未来

買い物した時に必ず発行されるレシート、皆さんはいつもどうされますか?レジ横のくず入れに入れる人、クーポンやお得な情報がないか必ず確認する人、常に財布はレシートでパンパンな人…などなど、レシートの扱い1つとっても個性が出るものですよね。

過去にはレシートを貼るだけの簡単家計管理法が主婦の間で流行ったりしましたが、最近ではスマホでレシートを撮影すると、自動で情報が反映される家計簿アプリもたくさん登場しています。でもこのレシート、発行の時点で電子化されていたら、もっと便利になると思いませんか?

実用化されている電子レシートサービス

実はいくつかのメーカーでは、既に電子レシートサービスが実用化されています。日本初の実証実験は2014年1月~3月、東芝テックとみやぎ生協が行いました。みやぎ生協は実験結果からスマートレシートの有効性を確認し、同年10月から全47店舗で本格導入しています。

みやぎ生協における実証実験の概要および結果

東芝テックのプレスリリースより

2014年の東芝テックの調査によると、91.5%のお客様が継続利用を希望しています。また企業にとっても、アプリを利用したメーカータイアップキャンペーンを行う事ができたり、アンケート機能を活用することで販促の成功・失敗の原因を知ることができ、大きなメリットが期待できるサービスと言えます。

東芝テック:スマートレシート

レシートはそのお店で商品を購入したことの証明書。捨てられてしまうことが多いですが、購入後に商品が壊れていたことが判明して交換したい場合などには、レシートの提出が求められます。しかしレシートを紛失・破棄した場合には、証明書がないために返品・交換に応じてもらえないことがほとんどです。

また店舗にとってレシートはコストです。店舗は決して安くはないプリンターを用意し、レシート用紙を購入しています。レシートの電子化はゴミの削減にもつながり、消費者やお店だけでなく環境にも優しい取り組みです。

ヤギのキャラクターが出迎えるホームページ

スマートレシートのホームページより

東芝テックでは、大日本印刷が提供する家計簿アプリ「レシーピ!」と連携し、スマートレシートで記録した買い物履歴データを、「レシーピ!」にまとめて取り込めるようにしています。また凸版印刷の電子チラシ「Shufoo!」と連携させ、買い物前のチラシ閲覧行動と買い物後の購買データを連動させることで、顧客に対して最適でお得な情報配信を実現するシステム開発にも取り組んでおり、今後のサービスの拡充も期待できます。

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スター精密:AllReceipts

プリンタを利用した電子レシートALLReceipts

ALLReceiptsのホームページより

小型プリンターやカードリーダーライターの製造を行っているスター精密は、自社プリンターを利用する店舗向けに無料の電子レシートサービスを展開しています。レシートデータがクラウド上に保管されるので、来店客はスマートフォンアプリを利用して印刷されたレシートのQRコードを読み取るか、レジにある専用端末にタッチすることでレシート情報を取得できます。

アプリはユーザー登録なしで利用でき、店舗が提供する最新情報が閲覧できたり、お店の満足度を4段階で評価できたり機能もあります。レシートの裏面もアプリで確認できるので、返品ポリシーやクーポンなどのお得な情報も逃すことがありません。

日本語のほか英語やスペイン語など8ヶ国語に対応しており、2015年にはアメリカ最大のリテール展示会NRF(National Retail Federation)でも発表しています。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格ISO27001認証も取得しているので、セキュリティも安心です。

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電子レシートの今後

経済産業省は2015年10 月に「流通・物流分野における情報の利活用に関する研究会」を設置し、流通分野等で発生する商品情報、POS、レシート等の多様なデータの利活用に取り組んでいます。その中で流通業に関連するID-POSデータについても検討されています。

POSデータは「何が、いつ、いくつ、いくらで売れたのか」を意味する情報で、ここに「誰に(売れたのか)=誰が(買ったのか)」という情報が追加されたのがID-POSです。ID-POSを利用すれば「買い手」の行動分析に踏み込むことができるため、企業にとって非常に有益な情報と位置付けられており、ポイントカードを導入している企業やネット通販などの企業では数々の実績を上げています。

しかし消費者の中には「勝手に自分の購買情報を利用されるのは嫌だ」と考える人も少なくありません。過去にもJR東日本が交通系ICカード「Suica」の乗降履歴を日立製作所に販売し、利用者やマスコミから大きな反発を受けたことがあり、企業の対応は慎重です。

経済産業省の構想

ビッグデータの利用でより良い社会を目指す

そこで経済産業省は、各企業が集めた情報を共有することで、より高度な分析と情報の利活用を図る目的で、電子レシートを利用したプラットフォームの構築を検討しています。これまで紙で管理していたレシート情報を電子化し、チェーンごとに分断されていた消費者個人の購買行動の情報を、消費者に蓄積することで活用しようという取り組みです。蓄積された情報は消費者自身が企業に開示するかどうかを判断できるので、本人が知らないうちにデータを利活用されるのを防ぐことができます。

一方、企業間の情報共有においては企業同士の連携による合理化や電子レシートの様式統一が課題の1つになっています。それぞれの企業がこれまでに集めたPOSデータは、各々が活用しやすいように最適化されています。既存のデータを共有していくためにはデータ変換コストがかかることが予想され、その費用負担が問題になっているのです。

これを受け、まだ普及がそれほど進んでいない電子レシートについては、初期段階で標準化が必要と考えられており、電子レシートが普及しているアメリカの例などを参考にしながら、様式の統一に向けた取り組みが進められています。

まとめ

電子レシートの様式が統一化されれば、家計簿アプリへの連携もしやすくなり、消費者にとってはメリットの大きいサービスになりそうです。企業にとっても、他社が収集したID-POSデータが活用できるようになれば、消費者に喜ばれるサービス開発を活性化させることができると思います。

昨年5月に「流通・物流分野における情報の利活用に関する研究会」がまとめた報告書の中には、データ共有のための環境が整っていないことを課題に挙げ、「中小企業の生産性向上・経営力強化のためにも、すべての小売店にPOSレジの導入が望まれる」といった内容の記述もあります。今後、小規模店舗へのPOSレジの普及は、電子レシートの普及とともに社会全体の課題になるかもしれません。